大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)2055号 判決

本籍

朝鮮慶尚南道昌寧郡南旨里四五六番地

住居

広島市東千田町四五六番地

土木請負業

吉田秀雄こと

南相君

大正一一年一二月二〇日生

本籍並びに住居

広島市尾長町西山根四七二番地

印刷業

宮本又吉

大正五年一〇月三日生

右被告人南相君に対する公文書偽造、公務執行妨害、窃盗教唆、被告人宮本又吉に対する公文書偽造、印紙犯罪処罰法違反各被告事件について、昭和二七年三月二七日広島高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人宮本又吉の弁護人今西貞夫の上告趣意について。

所論第一点は、単なる法令違反の主張であり(原判決がこの点に関しなした、「第一審判決挙示の証拠によると、同判示の偽造公文書は、いずれも、当該公文書の信用を害する危険がある程度の形式外観を具えていることが認められる」旨の判示竝びに『第一審判決の判示各偽造外食券に「当該地方食糧配給公団名及び交付配給所名のなつ印」の要求されるのは、整理上交付配給所を明らかにするためで、これを欠くからといつて外食券でないという趣旨ではないと解すべき』旨の判示は、いずれも正当であると認められる。)、同第二点、第三点は、単なる訴訟法違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人南相君の弁護人本間大吉の上告趣意について。

原判決が、所論のごとく第一審判決が心神耗弱の主張に対し、判断をしなかつた違法を認めながら、所論のごとき理由をもつて判決に影響を及ぼさないとして弁護人の主張を排斥したこと、並びに、所論各高等裁判所の判決がかかる違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである旨判示したことは、所論のとおりである。従つて、原判決は、右各高等裁判所の判例に違反した判断をしたものといわなければならない。しかし、当裁判所第三小法廷は、原判決後昭和二八年五月一二日原判決と同趣旨に出た昭和二六年九月一三日の東京高等裁判所の判決を是認して、判断遺脱があつても常に必ずしも判決に影響を及ぼさない旨判示しているのである(判例集七巻五号一〇一一頁以下参)。そして、当法廷においても右の判断を正当と考えるから、刑訴四一〇条二項により前記各高等裁判所の判例を右の限度にこれを変更して原判決を維持するを相当と認める。

よつて、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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